『 踊って頂けますか?  ― (1) ―  』

 

 

 

 

   へえ ・・・ うわあ〜〜〜  うっそ〜  やべ!

 

様々な声 と 呻き声 そして 声にならない声 と 溜息 が

そちこちから湧きあがる。

 

「 ・・・ う わ ・・・ 」

フランソワーズも 掲示板の前で立ち尽くしてしまった。

「 あ〜〜〜 ・・・ う〜〜〜 」

「 だはは〜〜  やられたぁ〜〜〜 」

隣では 仲良しのみちよが やっぱり微妙〜〜な声を上げている。

「 ・・・ みちよ? どした の 」

「 ・・・え?  あ ・・・ うん ・・・・ あ〜〜〜〜〜

 やられたあ って さあ  アタシ。 がび〜〜ん だあ 」

「 みちよも? ・・・ で  なにが回ってきたの 」

「 え?   あ ・・・  うん ・・・・ あのう〜〜〜 さあ 」

「 ?? なあにぃ〜 みちよ姐さんらしくないわね?

 いつだって なんだって どん! と来い でしょう? 」

「 ・・・ そ〜〜なんだけど さ〜〜 」

長年の仲良し同士、 お互いの性格もよ〜くわかっているので

おしゃべりでも 遠慮などない。

かなり単刀直入に 話している。

「 そ〜なんだけど? 」

「 うん。 そ〜なんだけど ・・・ これってぇ 

 あんまりだよう〜〜〜  マダムに やられた ・・・ 」

「 やられたって まあ いつものコトだけどねえ

 わたしも なの。 これは ちょっとなあ〜〜〜 だわ 」

「 おお〜〜 フランせんせい でも? 」

「 はい。 フランせんせい でも。 」

フランソワーズは 昨年からジュニア・クラス いや ベビー・クラスの

教えを担当している。

この金髪の 万年少女 みたいな フランせんせい は

( 実は二人の子持ちなのだけど ) チビっこ達にも 人気である。

「 ね〜〜 フランせんせい。 ど〜したらいいですか 」

「 みちよさん? どうしましたか 

「 あのう ・・・。 」

「 おはなし してくれなかったら わからないわ? 」

「 ・・・ ウン ・・・ 

 あのう  ね。 みちよ にはァ 『 ジゼル 』 が回ってきましたっ 」

「 え〜〜〜〜〜〜〜   ・・・ あ ごめん・・・ 」

「 いいって。   フランせんせい は? 」

「 わたし は  『 白鳥 』の グラン・アダージオ です!

 相手は あの! タクヤくん です! 」

「 だ〜〜〜〜〜〜  ・・・ ごめん 言わない。

 タクヤ君と グラン・アダージオ??

 年し〜たのおとこのこ♪ かあ 」

「 ?? 」

往年の大ヒット曲は このパリジェンヌには 残念ながら通じなかった・・・

「 あ うん  そうなんだ? 」

「 そ。 選りにもよって! あの超元気モノと  火の玉小僧と

 しっとり 愛を踊る なんて 〜〜〜〜  ・・・ 無理かも 」

「 アタシ。 10キロくらいダイエットしなきゃ ・・・

 裏切られたくらいで死んじゃう・繊細ハート には無縁のアタシだよ? 」

「 はあ〜〜〜 」

「 ふう〜〜〜 」

長年の仲良しコンビ? は 同じ量で同じ深さのため息を 吐いた。

 

ここは 都心に近い中堅どころのバレエ団。

フランソワーズは ジョーと結婚する前からずっと通っている。

初めは研究生、 そして 団員となり ・・・

結婚してからも そして 双子のチビ達が生まれてからも 

ずっと頑張っているのだ。

 

      また 踊れる なんて 夢みたい!

 

彼女は ずっとその喜びを胸に頑張ってきている。

スター・ダンサー や 有名なプリマ・バレリーナ には

なれないけれど 彼女は存在感のある中堅ダンサーとして

舞台を務めている。

    

このバレエ団では 定期公演とは別の 小公演 では

必ず サプライズ がある。

いや サプライズ なのはダンサー側の事情なのだけれど・・・

つまり ― 意外な役 が 回ってくるのだ。 

これは 主宰者であるマダムの 断固たる方針なのだが。

 

「 どうしよう〜〜〜〜 」

いつも元気な みちよさん が 凹んでいる。

「 ・・・ ・・・ 」

いつも笑顔な フランソワーズさん が 眉間に縦皺である。

 

「 よっ! お二人さ〜〜ん 」

さ・・・っいこ〜〜に明るい声が 弾んだ足音と一緒に

近寄ってきた。

「 え ・・・ ああ  タクヤ ・・・ 」

「 お〜〜す♪  フラン〜〜〜 配役表みたよな?

 あ どうぞ ヨロシク!  ああ 僕のオデット姫さま〜〜〜 」

「 あ ・・・ ええ  まあ 」

「 ん? あれえ みちよちゃん? どしたのぉ 」

「 え  ああ ・・・ うん べつに 」

「 ? あ そっか〜〜  トモと 『 ジゼル 』 だっけ?

 みちよちゃんのテクなら楽々クリア〜〜 だろ? 

 トモのヤツも張り切ってるぜえ〜〜 」

「 あ ・・・ そ?  アリガト ・・・ はあ ・・・」

「 ? みちよちゃん なんか元気ね〜な〜 あ 腹ぺこかい?

 ま いっか  なあなあ フラン〜〜〜 自習しようぜ 」

「 え ・・・ 」

「 え って。 グラン・アダージオ だぜ?

 甘くみたらヤバいぜ〜〜 」

「 ・・・ 甘くなんか見てないわ。

 ただ ・・・ そのう〜〜  大変だなあ って・・・ 」

「 え〜〜 あったり前じゃ〜〜ん☆

 そこを〜 俺たち二人でクリアするんだぜ?

 あ〜 まあ 今日は振りもまだ確認してね〜からな〜

 うん じゃ 明日! がんばろ〜ぜ〜〜 俺のオデット姫〜〜 」

 

   んばっ! 

 

ひどくヘタクソな投げキスをすると タクヤはもう最高に

ご機嫌ちゃんで 帰っていった。

 

    はあ〜〜〜〜   フランソワーズが深い深いため息をはく。

 

「 ・・・ 彼とグラン・アダージオ  かあ ・・・ 」

「 なんか勘違いしてるよね? アイツ 」

「 多分 ・・・ まあ やる気だけはてんこ盛りらしいわ 」

「 ふ ん  やる気で踊れりゃ世話ないわな 」

「 ・・・ そうよ ねえ ・・・

 タクヤはね 『 海賊 』 とか  『 パキータ 』 とか

 とにかく元気に跳ねまわっているのが 向いていると思うわ 」

「 だよね〜〜〜   およそ憂愁のプリンス って柄じゃないよ 」

「 ・・・ ね? 」

「 あれ ・・・ いつか 『 ジゼル 』 踊ったよね タクヤと 

「 ええ。 あの時は < 新しい体験 > で夢中だったみたい。

 それにさ アルブレヒトってちょっと演劇みたいじゃない? 」

「 あ〜 ・・・ 芝居っ気が必要だわなあ 」

「 ノリノリで 悲劇の王子 を演じられて楽しかったらしいわ 

 も〜ね ラストなんて半泣きでお墓の前、だったから 」

「 へ え 〜 

「 ・・・ あ。 そっか  わかったぁ

「 え なに 」

「 だから 彼に グラン・アダージオ が回ってきたのよ 

 およそタイプじゃないキャラだから ・・・ 」

「 あ ・・・ な〜る ・・・マダムらしねえ 」

「 ホントよ ぉ・・・ 」

「 だから アタシに 『 ジゼル 』 かあ ・・・

 恋にやつれ恋に死んだ薄幸の乙女 を 踊れってか 

 ねえ フランソワーズ 」

「 はい? 」

「 マジ アタシに踊れると思う? 『 ジゼル 』 」

「 え〜〜 みちよのテクなら楽々じゃないの? 

 ジャンプ力 あるから ふわ〜〜 ・・・・って浮くわよ 」

「 そ〜じゃなくて  ・・・ そのう 情感って方。 

 ふわり・・・と 墓場の鬼火みたいに そして 朝陽の前で

 淡く消えていってしまう・・・ 乙女 を! 」

「 ・・・ やる。 やるっきゃない。 

「 そ だね ・・・ おし。 決めた。

 アタシ  ダイエットする。  たった今から。 」

「 ・・・ え ・・・ すご ・・・ 」

「 だから フランも。 あのやんちゃ坊主と愛のパ・ド・ドウを

 踊るんだよっ 」

「 う ・・・  そ  そう ね ・・・ 」

長年の仲良しは くら〜〜〜い視線を交わし くら〜〜〜く笑いあった。

 

 

  タタタタ〜〜〜  タン(^^♪  タっ タッ タッ

 

い〜トシした青年が 公道をすきっぷ すきっぷ ・・・ な雰囲気で

実際にちょびっと浮き上がりつつ 歩いている。

も〜〜〜 彼には周囲がなんでもかんでも 桃色 に見えるのだ。

薔薇色 なんてもんじゃない、はっきり 桃色! だ。

「 ふんふんふ〜〜〜ん♪  今回は 相思相愛の恋人同士 だぜ??

 ふふふ♪ あま〜〜〜い ラブ・シーン だもんなあ(^^♪ 

 うっきゃきゃ〜〜  フランと♪ 公衆の面前で!

 堂々と ラブラブの踊り なんだぜぇ〜〜〜〜 」

 

  えっへっへ ・・・ 隠しても隠しても顔がニヤけてしまう。

 

「 フランのテクは抜群だから センターずらすことなんかないからな〜

 サポートもリフトも安心できるし。

 俺様は 今 故障ナシの絶好調だし?

 ふっふっふ〜〜 後は 二人で愛のシーン を醸しだすだけ さあ(^^♪ 」

通い慣れたいつもの道、なんの変哲もない道が

今日は 愛の小路 に見える。 道端に咲く小さな花にも目がとまる。

「 お? へえ〜〜  こんなトコで花が咲いてる ・・・ 

 すげ〜な〜 おい 頑張れよ〜〜  俺も頑張るから!

 なんたって 王子サマ なんだからな〜〜

 そんでもって愛するオデット姫と らぶらぶ〜〜〜♪ 」

 

    タクヤ。 テクニックだけじゃ 踊れないのよ。

    いい? フランソワーズとよ〜〜く勉強しなさい

 

不意に マダムの言葉が脳裏に蘇った。

「 ・・・ あ  あ〜〜 ? 」

 

 

今朝 クラスの後、呼び止められた。

「 タクヤ。 ちょっと いい 」

「 へ?  あ はい〜〜〜 」

「 あのね 次の小公演、『 白鳥〜  』の グラン・アダージオ ね。 」

「 ・・・ へ?? あの お 俺が ですか 」

「 いやねぇ なんて顔してるの?

 そうよ 貴方とフランソワーズで。 まあ 彼女からノーが

 でなければ だけどね 」

「 うへ〜〜〜 う わ〜〜 ふ フラン ・・・ ソワーズさん と

 は 白鳥〜 っすか !! 」

「 そうです、 ちょっと? 聞いてるの 」

「 !!! 」

タクヤは 実際にその場でなんの助走もなしに垂直に上昇した。

「 ? ちょっと タクヤ? なにを 」

「 あ ・・・ す すんません  うわああ〜〜〜 」

「 ?? ですからね  わかった? フランソワーズと

 よ〜〜〜〜く研究して 勉強してね。 

 いい?  テクニックだけで踊るのが バレエじゃないのよ? 

スケジュールはすぐに出すから 」

「 は はい〜〜〜〜〜 うわあ〜〜〜 うわ〜〜 」

「 ・・・ 大丈夫かしら。 ・・・ どこか打った? 

 ああ フランソワーズ、苦労しそう 」

マダムは ちょんちょん跳んでゆく青年を 呆れ顔で見送った。

 

 

「 ・・・ そうだよなあ〜〜  跳んで回って王子サマとお姫さま

 ・・・じゃあねえもんなア 」

ふうむ ・・・? 今の今までちょんちょん飛び跳ねていた人物は

いきなり 動きを止めた。

「 ・・・ってことは。 フランとよ〜〜く研究しろってことは

 ただ高く跳んで やたらとぶんぶん回ればいい ってもんじゃない

 っつ〜〜 ことだよ な? 」

 

   王子サマ かあ ・・・ ふむ?

 

タクヤは立ち止まり さすがに道端に少し寄った。

「 王子サマっつ〜と。  あ〜〜 上品で? え〜〜〜・・・

 あ! ジェントルマンで? 頼もしい・・? 

 ふ〜〜ん ・・・ 初対面に近いオデットさんに好感 持ってもらわんと〜

 ってことは ・・・ 」

 

   すっ ・・・ すっ・・・ 

 

青年は気取って最高に丁寧に爪先から足を下ろして 歩く。

 

― それは 舞台ではとても美しい姿であるが

・・・ 街中でやったら 単なるヘンなヒト だった ・・・

街行く善良かつ ふつ〜の人々 は賢明にもこのヘンなヒトを

避け 関わり合いにならないようにと足早にパス・スルーして行った。

 

「 ご安心ください。 アヤシイものではありません。

 貴女の、貴女方の味方です ・・・ ってカンジか・・・? 」

 

     う〜〜む・・・?

     けど そんなんで お姫サマは信頼してくれるか?

 

     いきなり現れて 

     貴女に永遠の愛を誓います! な〜んて言われても

 

     コイツ ヤバくね??  で スルー・・・

     だよなあ ふつ〜。

 

     じゃあ さ。 どんな王子サマ すれば

     フラン姫 は 振り向いてくれるのかなあ 

 

     う〜〜〜む ・・・

 

周囲のことなどこれっぽっちも気にしていないので

タクヤは腕組みをし あらぬ方向に視線を飛ばしたままだ。

そして 妙〜〜に空いている空間を 歩いてゆくのだった。

 

 この日 ― 都心のメトロや電車では やたら高齢者に親切な青年の

存在が ちょこっと話題になったとか・・・

 

 

 

 「 ただいま ・・・ 」

フランソワーズは ゆっくりと玄関のドアを開けた。

「 ・・・あら?  この靴・・・ ジョー ?

 もう帰っているの? 」

靴を脱ぎつつ 思わず中に向かって声を掛けた。

 

    ダダダダダ  −−−− 

 

「 おかえり〜〜〜〜 フラン〜〜 」

足音と一緒に その持ち主が 彼女が完全に靴を脱ぐ前に! 現れた。

 

  シュタッ!  彼は彼女を抱き上げると ― 熱烈なキスをした。

 

「 ん〜〜〜んんん 」

「 ・・・  ん  もう・・・ジョーってば ・・・ 」

「 えへへ・・・ ゴチソウサマ(^^♪ 

< お帰りのキス > は 二人のなが〜〜い習慣なのだが。

 

「 ・・っと。 お帰りなさい ジョー ・・・ 今日は早番だったっけ? 」

「 そうだよ〜〜 今朝 言ったじゃん 」

「 あ そうだった・・・? ああ チビ達 もう帰ってるでしょ? 」

「 うん♪ 三人でさ〜〜〜 オヤツにね  うふふ〜〜〜

 とっても楽しいコト したんだ〜〜 」

「 あら そうなの? よかったわね ・・・

 えっと ・・・ 晩ご飯の材料だけど 」

「 ねえ ねえ 聞きたくない?? オヤツがなんだったか 」

ジョーは フランソワ―ズに纏わりつき すぐに彼女の荷物を

持ってくれた。 それはありがたいのだけど・・・

「 え? 楽しかったのでしょう それならいいわ 」

「 あの ね〜〜 三人でホット・ケーキ! 作ったよ 」

「 あ ホット・ケーキミックス、すぐにわかったでしょう?

 すばるが教えたのかしら。 

 すばるなら ホット・ケーキはお得意でしょ。 

 皆で食べてよかったわね〜〜   えっと 晩御飯には

 トマトと ・・・ そうだわ キュウリがないのよね ・・・

 すぴかさああ〜〜ん ? 」

「 フラン〜〜 それでね ホット・ケーキ がね 

 みんなでね ・・・ 」

「 はい ちょっと待ってね ジョー。

 すぴかさあ〜〜ん  ちょっと来て〜〜 

 

「 なに〜〜〜 おか〜さ〜〜ん 」

 

すぴかがお煎餅をちびちび大事そう〜〜〜に齧り齧り 玄関まで出てきた。

「 すぴかさん。 ちょっとお願い。

 自転車で 下の八百藤さんまで行ってきてくれない?

 トマトとキュウリ・・・ 買うの忘れたわ 」

「 いいけどぉ〜〜    ねえ お煎餅 これがラストなんだけどぉ 」

「 ・・・ それも買ってきていいわ。 」

「 わい♪  あと〜〜 タマネギとかも買ってこようか? 」

「 それは大丈夫。 じゃ お願いね  はい お金 」

「 らじゃ〜〜〜  ふんふんふ〜ん♪ 」

すぴかは 手に持っていたお煎餅を全部口に押し込むと 

スニーカーを履いて上機嫌で駆けだして行った。

「 ふう ・・・ あ そうだわ!  もうひとつ!

 すばるく〜〜ん ちょっと来て〜〜〜〜 

 

「 おか〜さ〜〜ん おかえりなさ〜〜い  なあに? 」

 

いつもにこにこすばる君 が にこにこして出てきた。

「 すばるクン。 ちょっとお願い。

 裏の温室とハーブ園でね 大葉とパセリ、摘んできてくれる? 」

「 おおば って シソの葉っぱだよね〜 いいよ〜〜

 どんくらい? 」

「 晩ご飯に使うの。 大葉は五枚。 大きいのね。

 パセリは ・・・ すばる君に任せるわ。 」

「 おっけ〜〜 あ ぱくち〜 もいる? 」

「 あら パクチー あるの? 

「 ウン。 張伯父さんのリクエストでさあ 結構モシャってるよ 

「 そう? それも すばる君にお任せ。 」

「 おっけ〜〜〜♪ ふんふんふ〜〜ん♪♪ 

 いちご あるかもな〜〜〜  ふふふふふ〜〜ん(^^♪ 」

すばるも 上機嫌でちょんちょん・・・裏庭に出ていった。

 

「 さあて 晩ご飯〜〜 っと 

「 ― フラン〜〜 」

彼女の後ろから くら〜〜〜い声が聞こえた。

「 !? ・・・ ああ ジョー ・・・ まだここにいたの? 」

「 だって! ぼくのはなし まだ聞いてもらってない ・・・ 」

「 え? あら ホット・ケーキのことならちゃんと聞いたわ?

 あ〜 そうだわ ジョー。 洗濯モノ! 取り込んできてくださる? 

「 ・・・え ・・・ いい けど ・・・ 」

「 お願いね〜〜 ウチは洗濯モノの量が多いでしょう?

 チビ達は毎日盛大に汚すし わたしも稽古着やらタオルやら・・・

 もうねえ あんなにたくさんの量をちゃんと干せるのは

 ジョーしかいないわ。  わたしだけじゃなにもできないもの 」

「 あ ・・・ は  そっかな〜〜 」

「 そうよう〜〜  毎朝手際よく乾してくれるでしょう?

 それにねえ ジョーが取り込んで畳んでくれるとね 

 とてもとても丁寧だから 本当に助かっているの。 」

「 え ・・・ そ そう? 」

「 ええ。 どうやったらあんな風に手際よくできるのか

 きっちり畳めるのかなあ〜 っていつも感心していうのよ 」

「 え ・・・っと・・・  それは ま 慣れかなあ 」

「 ううん そんなこと ないわ。

 ジョーがちゃんと考えてやっているから よ。

 さすがねえ・・・ うふふ わたしの旦那サンは やっぱり

 世界最強最高だわ〜〜 

「 え っへん ・・・ うん わかった。

 洗濯モノ 全部取り込んでいいんだね? 

「 はい 全部です。 お願いします。 」

「 わかったよ。  きみは安心して夕食の用意にとりかかってくれたまえ。

 ああ 洗濯モノは全部きっちり畳んで 分けておくから 

 チビ達の分は 子供部屋に届けておくよ 」

「 まあ〜〜〜 素晴らしい〜〜〜 

 わたし・・・幸せよ ・・・ こんなに素敵な良人を持って ・・・ 

「 ふふ 任せろ。   じゃ 

「 はい お願いね  アイシテルわ〜〜 

「 ふふふ ・・・ 」

ちょいと拗ねていた大きなオトコノコ  は どこかへ雨散霧消した。

今 ジョーは大らかな微笑を浮かべ 家事を引き受ける理解ある余裕の夫として

ゆっくりとした足取りで 裏庭に向かったのだった。

 

      はあ〜〜〜〜 ・・・・

      やれやれ・・・

      や〜〜〜っと 構ってちゃん・ジョー が

      消えてくれたわ〜〜〜

 

      ・・・ すばるより手がかかるかも ・・・

      オトコノコって 本当に もう〜〜〜

 

      さ ご機嫌がもどらない間に

      大好物の ウチのかれー に取り掛っちゃおっと

 

フランソワーズは < コドモ達 > の 定番・めにゅう を

作るべく とっととキッチンを目指した。

 

 

ジョーと結婚してから ― それまでかなり長い期間 一緒に暮らしてはいたけれど ― 

フランソワーズは 驚きの連続だった。

もちろん 異国の青年と一緒になるのだから 諸事情アリ だろうし

それなりの覚悟と予想はもっていたけれど ― そんなモンじゃなかった。

 

      ・・・ 結婚って。

      まさに まさしく ほんとうに!

      異文化 との遭遇だわ !

 

      このヒト ・・・ ほんとうに地球人??

 

実際 ―  ジョーを  普通のヒトとして躾ける  のは大変だった。

彼は彼なりの やり方 に かなり拘るオトコなのだ。

一人で生きてきた、彼なりの生きるやり方 を貫いてゆく気 満々だった。

それは それで立派なことだ とは思う。

 

「 でもね。  家庭があるの。  みんなその一員なの。

 自分のコトだけじゃなくて ウチのこと、しっかりやってくれないと。

 いつまでも 一人暮らし じゃないのよね

 家庭人としても 意識して生きてくれないと! 」

 

あの頃 フランソワーズは きゅ・・・・っとエプロンのヒモを結び直すと

姿勢を正し ― 決意したのだ。

 

「 わたしが やるっきゃない。   躾けなおし だわ! 」

 

    そうよねえ ・・・

    すばるに教えるみたいに ジョーを < 躾けた > わ

 

    脱いだ服は 洗濯機へ とか 靴下は丸めたままにしない! とか。

    ご馳走様 したら 自分の食器は自分で洗う とか。

    ウチのことをするのは お手伝い じゃなくて当然のことなんだ って!

 

むしろ すぴかとすばるが生まてからの方が ず〜〜〜っと楽になった。

彼は 率先して家事をやってくれるようになったから・・・ 

愛してやまない子供たちと そのお母さんのために!

 

    ・・・ 大変だったけど ・・・

    でも 躾け甲斐 はあったと思うなあ〜〜

    うん。  今はねえ 自己満かもしれないけど

    ふふふ〜〜ん  

    ジョーのことなら たいがいのことなら わかるもんね

 

    そりゃ 仕事のことはわからないけど

    彼がどんな気持ちの時にどういう行動をとるかって

    もうぜ〜〜んぶ お見通し だもの わたし。

 

     ・・・ ねえ 003さん?

    あなた 今だったら簡単に 世界征服 できるかもよ?

    だって 最強のサイボーグ戦士009 の弱みを

    し〜〜〜〜っかり握っているのですものねえ・・・

 

子供達の躾けは ず〜〜〜っと簡単だった。

彼らは 実に素直に母親の言うコトを実行し覚えてくれたから。 

 

「 そっか〜〜  わたしのママンだって パパやお兄ちゃんを

 陰で躾けてたのよねえ ・・・  

 ねえ ママン? ママンって  すごいわあ〜〜〜〜 

穏やかで優しかった母の面影に 今では尊敬の念をささげている。

 

「 あ そうか。 そうなのよね!

 タクヤだって すばるとたいして変わらないじゃない?

 しっかり躾ければいいんだわ!  王子サマ として ね! 」

 

ジャガイモを剥きつつ 彼女は大きくうなずいた。

 

「 そうなのよ〜〜〜  火の玉小僧 とどうやって踊る・・・

 って悩むよりも ちゃんと 王子サマ に躾ければいいのよ それだけよ。

 経験はばっちり だし?  ふふふ〜〜ん これならなんとかなる かも♪ 

 そうして 想いを込めてオデット、踊るわあ〜 ♪ 」

 

彼女の表情は ぱあ〜〜〜っと晴れやかになり

解凍するお肉の量が 増えた。

 

 バタン ・・・ お勝手口からすばるが入ってきた。

「 あら すばる君。 収穫は どう? 」

「 ウン はい これとってきたよ〜〜  

 あ! おか〜〜さん!  なに やってるの じゃがいも??

 僕がやる!  じゃがいも 僕がやるってば〜〜〜  

すばるは籠を母親に押し付けると さっさとマイ・包丁を取りだしている。

お口の周りが ちょびっと赤くなっていて甘い匂いがする・・・

 

    ・・・ ははあ ・・・

    イチゴ 摘み喰い してきてな?

 

    ・・・ ま いいわ。

    すぴかはお煎餅の追加があるんだし・・・

 

「 おか〜さん! じゃがいも と え〜と ほかのやさいも

 僕がやるから。 おか〜さんは 大きなおなべ 出して。

 にこみ用のだよ〜  え〜と あとは・・・ 

 ちょこっとオリーブ・オイル たらしといて。

 あとは ・・・ そだ!  カレー粉! あるよねえ かくにんして 」

 

いつものんびり・ほわほわしているすばるなのだが

キッチンに立つと 別人みたいにてきぱき・・・指示をとばす。

 

「 はいはい わかりました。 美味しいカレー お願いね すばる君 」

「 まっかせ〜なさ〜い♪ 」

 

    ふふふ  そうなのよね〜〜

    ちゃんと躾ければ この頼もしさ(^^

 

    そうよ! 

    タクヤだってすばると 同じ。

    しっかり指導すれば ― 立派な王子サマになる はず!

 

フランソワーズは キッチンで会心の笑みを浮かべるのだった。

 

      さあて。 グラン・アダージオ は 

      なかなか 手強いよ お二人さん♪

 

 

Last updated : 09.21.2021.                   index      /     next

 

 

*********   途中ですが

久々 あのカレシの登場です〜〜〜 (>_<)

本人 大真面目 なのですが ・・・ コメディっぽい?

グラン・アダージオ の説明は 後編で (^_-)-